傘をもたない蟻たちは

短編集である「傘をもたない蟻たちは」は、人間の欲望を着色せず醜いまま表現されている数少ない作品です。 最初の「染色」は両腕にカラースプレーを吹き付けて手に馴染ませるという不思議な習慣のある女子大生がとにかく魅力的です。主人公の青年は彼女がいながら、その不思議な女子大生に惹かれて体の関係を持ってしまうようなどうしようもない男です。正直、最後まで読み終わっても主人公は好きになれません。でもそれがこの物語のいいところです。他の小説のように綺麗で「いい人」な主人公ではなく、その辺にいる度胸はないが、理想は高く、自... Read More

歴史に忠実な痛快小説「天平グレート・ジャーニー 平群広成の数奇な冒険」

上野誠著の時代小説「天平グレート・ジャーニー 平群広成の数奇な冒険」は、やや今ひとつなタイトル名とは全然違い、空前絶後、のめり込むこと必至の冒険サバイバル物語になっています。  舞台は奈良時代、遣唐使に派遣される朝廷の役人たちの苦心惨憺たる様子を活写した物語です。主人公は当時の朝廷ではまあ中間管理職ともいえる、中級役人の平群広成。エリートである遣唐使の一員に選ばれ、いろいろと多難の末に唐の玄宗皇帝に拝謁します。  そこまではよかったものの、帰路は文字通り波瀾万丈、命がけの冒険となります。海上が荒れ仲間とは... Read More

防災意識を高めるのに最適な「富士山噴火」(高嶋哲夫著)

高嶋哲夫著のパニック小説「富士山噴火」は、ちょっと心が緩んだときに、大災害への備えを常に頭の中でシミュレーションしておかねば、とねじを回し直すにはちょうどよい「恐ろしい」作品です。  東日本大震災からかなり年数がたちましたが、次は南海トラフ地震か、首都直下地震か、と日本人は気が気ではありません。それに加えて、首都圏や東海地方の人々を恐れさせているのが、この小説のテーマでもある富士山の300年ぶりの噴火でしょう。  ストーリーは題名そのもの。高嶋の出世作である「M8」などと同じく、日常生活をしているところに... Read More

黄金の島 日本も含む大きなアジア圏

久しぶりに侵食忘れて読んだ小説でした。日本の暴力団員が日本を追われる事となり、タイからベトナムへと流れていき、最後にはベトナムの若者たちと木造船で日本へ帰国しようとする・・・というお話なのですが、非常に興味深かったのは、ベトナムという国についての記述でした。 この本の中で、”日本人ほどアジア人を見下している国民はいない”というセリフがあるのですが、確かにそうかもしれないな・・・と思いました。 それを私自身、最も身に染みて感じる理由は、私が今、イギリスにいるからというのもあるからかもしれません。 日本に住ん... Read More

一歩を踏み出したい貴方への屍鬼の『答え』

先日、小野不由美さんの『屍鬼』を読みました。切っ掛けは、好きな漫画家の方がこちらの小説を漫画化していた事と、これまた好きなゲームの監督さんが大絶賛していた事。 もう題名からして分かり易くホラー小説です。 何気なく書店で見かけ、1冊手に取ってみると重い‼︎しかもそれが6冊も‼︎ ちょっと一気に持ち帰るのは困難そうなので1冊づつ購入しました。 ざっくりしたあらすじを紹介すると、舞台は山間の寒村。 そこにある家族が村の高台に引っ越しをしてきた所から話が始まります。使用人以外は殆ど外に出ない不思議な家族。 村人達... Read More

苦みを秘めた男の物語「風車の浜吉 捕物綴」

「風車の浜吉」は、伊藤桂一先生の時代小説です。元岡っ引きの風車売り・根津の浜吉と、彼を取り巻く人々が事件を解決していきます。 縁日などで見事な風車を売る浜吉は、実は元は、敏利きで知られた岡っ引き。 妻子の病を治したいばかりに、つい悪人を見逃して、五年の江戸払いの憂き目に遭った過去があります。 妻子を亡くし、各地を放浪して江戸へ帰った今も、過去を恥じて風車売りをしているのです。 そんな浜吉の前に現れたのが、かつて彼に憧れていた留吉。 今はお上のご用に働く彼は、何かと浜吉を捕物世界に戻そうとし、また、浜吉の頭... Read More

元夫婦を繋ぐ往復書簡「錦繍」

「錦繍」は、宮本輝さんの書簡形式小説です。別れた夫婦が旅先で偶然すれ違い、亜紀はかつての夫・靖明に、十年ぶりに手紙を出します。 二人はお互いに心を残しながらも、靖明の浮気、そして心中未遂事件から別れたのでした。 今さら何を言っても、と迷惑がっていた靖明も、やがて記憶に引きずられるようにペンを取ります。 当時何があったのか、何を考えていたのか。あの時は訊けなかったこと、言えなかったこと。 そして、別れてからの互いの人生を。「かつて夫婦だった、けれど二度と会わない相手」という、不思議な関係。 もしかしたらそれ... Read More

ROOM「ルーム」 原作:エマ ドナヒュー 

外国の本です。 この本はさらわれた子供が部屋に閉じ込められてその小さな世界で暮らすという本です。 すごく心理学的に興味深いと思ったことはさらわれた子に子供ができ、その子の得られる経験です。その部屋の世界からの。 これを見て私は人は経験から考え方がまとまっていくんだとわかりました。例えば、その部屋にはテレビがおいてありそこから犬や空や自然やニュースを子供は学びました。けれども彼の経験上外には一度も出たことがないので、母に実はこれらすべては存在してるといわれても納得がいきませんでした。 外に出ている私からして... Read More

皮膚科医が書いた本でも述べられていたこと

そろそろ夏本番で、日焼けが気になりだすころです。日焼け対策は女性だけのものではなく、男性でも対策される方が増えてるような気もします。 日焼け対策をする主な理由として「白い肌を保ちたい」「皮膚ガンにならないように」といったところですよね。 そして具体的な対策は、長袖を着たり日焼け止めを塗るなどが多いかと思います。 実際私も今までは日光を直接浴びることは極力避けてきました。 しかし、最近は「日焼け対策はほどほどに」という考えに変わってきました。 日光を浴びないことにはデメリットがあります。 例えば、喫煙と同じ... Read More

子どもが読んではいけない「甘い監獄」

読書好きな小学生高学年の子どもなら、大人が読む小説を読んでいても不思議ではありません。 ですが、いくら読書が好きだからと言っても、小学生に「甘い監獄」は読ませてはいけません。 親御さんは、自分の子どもがこの小説を読んでいると分かった時点で、子どもから取りあげてください。 なぜなら、「甘い監獄」にはセックスシーンが、たくさん書かれているからです。 それだけでは、ありません。不倫や妻に対する暴力など、男女の黒い関係が、ありありと書かれています。 角川ホラー文庫から出版されているこの本の特徴は、読者を怖がらせよ... Read More