防災意識を高めるのに最適な「富士山噴火」(高嶋哲夫著)

高嶋哲夫著のパニック小説「富士山噴火」は、ちょっと心が緩んだときに、大災害への備えを常に頭の中でシミュレーションしておかねば、とねじを回し直すにはちょうどよい「恐ろしい」作品です。

 東日本大震災からかなり年数がたちましたが、次は南海トラフ地震か、首都直下地震か、と日本人は気が気ではありません。それに加えて、首都圏や東海地方の人々を恐れさせているのが、この小説のテーマでもある富士山の300年ぶりの噴火でしょう。

 ストーリーは題名そのもの。高嶋の出世作である「M8」などと同じく、日常生活をしているところに自然の猛威がひたひたと迫り、ある瞬間から凶暴な牙をむきます。非常にかったつな筆致で迫り来る恐怖を模写してあり、臨場感は抜群ですが、読みながら「本当に富士山が爆発したら、こんなものじゃ済まないんだろうな…」と思うと、心底肝が冷えます。読後、へとへとになった私は「お願いだからあと100年以上は噴火しないで」と祈らずにはいられませんでした。

 難を言えば、あくまで小説ですから、現実と比べると設定がちょっとおかしいんじゃないの、という部分が若干あることです。小説では南海トラフ地震から3年後に富士山が爆発するわけですが、その割に政府も自衛隊も全然警戒心が薄い。小説では地元の市長ばかりが東奔西走していますが、実際には政府も県知事も大規模に組織的に動くはず。まあこのあたりのディテールを細かく書きすぎると焦点がぼけてしまいますので、登場人物をごくシンプルにするためには、やむを得ないかもしれません。

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