『私の男』桜庭一樹

浅野忠信・二階堂ふみダブル主演の映画化で話題となった作品の原作。

津波で家族を失った「花」と彼女を育てる「淳悟」の禁断の愛の物語です。

物語は、花の結婚と、淳悟の失踪に花が気づくシーンから、津波で行き場を失った子供時代の花と海上保安官の淳悟の出会いまで、”逆方向”に進んでいきます。

封印された二人の関係や、秘められた情事。歯止めの利かない想いを隠すために冒した罪。不安感に満ちた人生の中で、孤独な二人がお互いを呼びあい、求め合う物語です。

小さかった花が成長し、淳悟を「私の男」だと言えるまでに熟成した二人の愛が、おどろおどろしくもあり、潔くもあります。淳悟の屈折した愛情を受け止める花は、9歳でもうすでに女として淳悟を見ていたのでしょう。家族とはどういうものか、血のつながりとは何かを考えさせられます。

決してハッピーエンドになりえない二人の生活と愛情を描くための舞台設定として、北海道の厳しくも美しい自然の描写が印象的です。二人の逃避行のどうしようもなさは、東京で暮らしたごみ溜めのような部屋で、よりいっそう悲壮感がまします。

救いのない報われない内容の物語ですが、二人の愛の純粋さがその不幸な設定の中で際立ち、光っている作品です。

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